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忍野「阿良々木くん……君、ロリコンに憑かれてるよ」 の続き3

490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/17(木) 01:23:13.94 ID:EXZg6/pDP
「えー、第一回っ、阿良々木先輩が児童性愛に目覚めたよスペシャル!
チキチキッ、真っ昼間から女児を交えた恋バナ大会ぃぃぃ~~!!」
「そんな事実、いちいちタイトルに入れなくていいからっ!」

ピューピュー口笛を吹いて場を盛り上げようとしているのは神原一人。
千石何かは、可愛そうなくらいあたふたしている。
まだ敏感な年頃の中学生だ。
そういう事を人前で話すのに、慣れてないのだろう。
……というか。
千石で恋バナっていったら、確実に藪から蛇が出てくるんだが。

「おい神原、本当にそのお題で行くのか?」
「おや阿良々木先輩? 戦場ヶ原先輩との性生活が
うまくいっていないせいで、口が重いのかな?」
「余計なお世話だよっ! ……っていうか神原、
口が重いのはお前だってそうだろ」

この場にいる何人かは、恋愛沙汰がこじれたせいで、
事件にまで発展してしまっている。
そんな暗い過去なんて忘れたいに決まっているだろう。
それをわざわざほじくり出すのは下種のやることだ。
神原が、周りに聞こえないように僕の耳元でささやく。

「撫子ちゃんのあれが、どうなったか知りたいじゃないですか」
「この下種野郎っ!」

「というのは冗談で。まあ、恋愛があれって人は、
恋人ではなく友達関連で流すのもありってのでどうだ?」
「ま、まぁそれなら……」

千石の様子をちらりと見る。

「あ、あのっ、こよみお兄ちゃん! 私、頑張るからっ!」
「お、おう……?」

なぜか知らないが、やたら気合いが入っていた。
例えあんな事があったとしても、根本は普通の女の子なのだ。
前向きに行こうと張り切っているのかもしれない。

「はいっ! はいはいっ!! 阿良々木先輩っ、はいはい!」
「うるさいな……わかったから、お前が一番でいいよ」

一番手は、やたらテンションの高い神原に決まった。
というか……こいつ大丈夫なのか?
冗談抜きのレズビアンだなんて深刻な問題抱えてて、何でそんなに余裕なんだよ。
おまけに、痴情のもつれで人殺し寸前まで行った癖に。
開幕から重すぎる話されて、フォローする僕の身にもなれってんだ。

「質問がある! この場全員が今履いているパンツの色を答えよ!」
「お前初っぱなから趣旨無視してんじゃねーよ!?
一ミリも恋バナに触れてねーし!」
「まず私から! 履いてないもんっ!!」
「履いてないのかよっ!? 履けよっ!! なぜ履かないっ!?
履かない方が人気出るとでも思ったかっ!?」

1発目からグダグダだった。


僕のツッコミにもめげない神原は、戦場ヶ原を指さし、

「パンツの色、戦場ヶ原先輩の番ですよ」
「私の下着の色、それは……この前阿良々木くんが黒の下着に
食いついたから、今日も黒よ」
「言わなくていいよっ!? というか、ついでに僕の嗜好まで晒さないでくれ!」
「阿良々木くんの、色は?」
「…は?」

戦場ヶ原の、僕に問うてくる目は真剣だった。

「私にだけ言わせておいて、自分は内緒だなんて性根が腐ってるわ」
「お前、僕のパンツの色なんて聞いて、何が楽しいんだよ。
なぁ、お前らだってそう思うだろ?」

八九寺と千石の、良識コンビに振ってみる。
が、予想に反しての八九寺の食いつきっぷりに僕は引いた。

「聞きたいですっ! 阿良々木さんのパンツの色! 後学の為にっ」
「一生ガキのお前に必要あるかそんな学!」
「…………そう、ですね……現役幽霊の私、八九寺真宵は、
男のパンツの色を知らないまま…」

落ち込むんだ! そこで!?

「せ…千石は、別に聞きたくないよな?」
「き……き、聞きたいですっ!」
「まじで!?」

清純派の千石が、男のパンツの色に悶々としているだとぉ!?
何てこった……あまりに衝撃的すぎて、僕のパンツの色が、
今この瞬間に変化してしまいそうだ。

「…わかったよ、言えばいいんだろ……青のトランクスだよ」

しん、と静まりかえる。
何で皆黙るんだよ。
いや、盛り上がられても困るけどさ。
八九寺がじっとりとした目で僕を眺め、

「阿良々木さんは、つまらないパンツ履いてますね」
「悪いかよっ!? そもそも面白いパンツって何だ!」

心ない一言に、僕はちょっとへこんだ。
神原が、何かを思いついたとばかりに手を叩く。

「阿良々木先輩のパンツが、本当にトランクスか調べる必要があるなっ」
「ねえよ! お前何言い出すんだよ!」

思いついたギャグは即実行せんと、神原は僕の方にずんずん近づいてくる。
左手の包帯を剥きながら。
冗談じゃない。
女の子の前でパンツ見られる自体屈辱だっていうのに、
無様にズボンを脱がされる現場を小学生に見られるだ何て…
黒歴史確定じゃないか!
僕は恋人の戦場ヶ原に、視線で助けを求める。

「そうね……このまま落としてもつまらないし。許可するわ」
「しちゃうの!?」

味方はおらず、四方は敵に囲まれていた。
八九寺は画用紙とえんぴつを取り出し、デッサンする気満々だ。
千石は恥ずかしそうに、両手で顔を覆ってはいるが、
両手の隙間からしっかりと覗いているのはモロばれだ。

「く……っ! このまま無様にやられてたまるかよっ!
自分のパンツくらい、自分で守ってみせる!」

雰囲気だけはかっこいいけど、内容があまりに格好悪すぎる。
しかし、負けるわけにはいかない。
負ければ、僕のプライド全てを失ってしまう。
八九寺には『パンツ脱がされた阿良々木さん』とからかわれるだろう。
千石は表面的には僕を慰めてくれるかもしれないが、
裏では僕の妹に『こよみお兄ちゃんのパンツからスルメの匂いがした』
とちくられる可能性だって否定出来ない。
そんなの……そんなの絶対嫌だ!
忍、お前の力を貸してくれっ! 僕のパンツの為に!

「…本気、出しますよ。阿良々木先輩」
「本気っ? 出しちゃうの!? パンツごときでっ!?」
「阿良々木先輩が勝てたら、真宵ちゃんのパンツをあげよう」
「まじで!?」

八九寺が両手でバッテン作りこれを否定。

「騙したな……僕を、ロリの心を騙したなっ!」

「…私が力を、この左手を手に入れたのは偶然だった。
望まない力に振り回されもした。泣かされた事もあった」
「何語りはじめてんだよっ! ただのとっくみあいだろ?
妙な雰囲気だそうとするなっ!」

千石駿河の左手。
悪魔から譲り受けし獣の豪腕。
怪異から解放された他の子達とは違い、
未だ神原の左腕は、悪魔に犯されたままだ。
その暴力性は人の域を超えたまさしく悪魔で、
半不死の僕の体を持ってしても,
半殺しの目にあうまで追い詰められた。

僕の喉が鳴る。
あの時の恐怖に、まず体が反応してしまう。

「私の人生をメチャクチャにしたこの左手だけど……
今は少しだけ感謝もしている。なぜならっ!」

神原が、異形の左手を許容した、その理由。
怪異のトラブルをきっかけに、戦場ヶ原と仲良くなれたからか。
僕という気の置けない友人が出来たから?
それとも……その怪力で、古雑誌回収の日に、道ばたに捨ててある
大量のエロ本を一度に抱えて持って帰れるから、か。

「今日この場で! 阿良々木先輩を強引に押し倒しっ!
上半身を残した全ての衣服をはぎ取る力が私にあることにっ、
全力で感謝している!!」
「うおおおおおぉぉぉぉ~~い!! 下全部脱がすって
どういうつもりだああぁぁ!?」
「いざお目にかからん! 阿良々木先輩のペ(ピーー)ニス!」
「伏せ字意味無ねぇ!?」

人は極度の絶望を踏み越えると、なぜか笑みをこぼすという。
今の僕が、まさにそんな感じだ。
ああ、駄目だこいつ……何ともならん。
だって、今まで会った神原の中で、とびきりいい顔してるもん。
僕は悟った。勝てねぇ。

涎を垂らしながら、迫りくる神原。
真っ向から戦ったら、僕に勝ち目は無い。
部屋が狭い上に、運動神経では、部活をやっていた神原に
敵うはずがないと来ている。
神原の攻撃を全てかわしきるのは不可能だ。
その上、神原の左――怪力を生み出す猿の手に捕まったら
その時点で終わってしまう。
近距離は非常に不味い。
にもかかわらず、一足飛びで間合いを詰められてしまった。

「さあ、ご開帳だ!」
「あっ、千石のパンチラがっ!」

使い古された、漫画みたいな騙し手。
非力な僕に使える策なんて、これ位しかなかった。
分の悪い賭けだ。
いくら人より性欲溢れる神原だって、
こんな単純すぎる罠に引っかかるわけ…。

「シャッターチャンスッ!」
「まじで引っかかってるよっ!?」

ぱしゃりと、ジャンピングダイブを決めながら、
神原がカメラのシャッターを切る。
お前いつの間にカメラ用意してたんだよ…。
まあいい。僕はこのスキに乗じて、部屋の外へ一旦逃げよう……
と、戦場ヶ原が入り口ドアの前に立っていた。
偶然のわけがない――っ、確認するまでもなく妨害だ。

「敵前逃亡なんて男らしくないわよ。潔く戦って、散りなさい」
「散りなさいって!? お前、自分の彼氏が皆の前で
ひんむかれてもいいってのかよ!」
「ゾクゾクするわ……っ」
「あぁ――! お前も変態だってこと忘れてたっ!!」

戦場ヶ原とのくだらない掛け合い、わずか数秒。
そのほんの数秒は――僕にとって生死を分ける程重要なものだった。
神原が体制を整えてしまった。
もう、僕が逃げ切れる可能性は潰えた。

「酷いな阿良々木先輩、私をハメハメするなんて。
おかげで良い写真が撮れたよ」
「撮れた、だと!? え、本当に見えてたのかっ?」
「正面から見えないのなら……低い位置から覗き込めばいいだけさっ」
「誰かこのローアングラーを通報しろっ!」

そして神原、後でデータのコピー頼むっ!

「遊びは終わりだ阿良々木先輩」

背後の逃亡経路は、戦場ヶ原の裏切りによって消滅した。
もう逃げ場は無い。
避けられない、神原との一合。

「避けられないなら――やるしかないよな、神原っ!」

間合いに入った神原は、すぐさま攻撃態勢に移る。
神原に防御など必要無い。一撃入れば終わってしまうのだから。
当てる事だけに気を配ればいい。

そんな神原の優位性など、僕は何一つ持っていない。
ただ、神原の次の攻撃を予測するのみ。
どっちの手が来る?
男の僕と互角を張れる、人間の右手か。
それとも、防御すら無効化する、悪魔の左手か。
決まってる。

「左手、だろ?」
「な――っ!?」

神原の左手による攻撃は、速すぎて見えなかった。
だがしかし――神原の猿の手は、僕という獲物を見失って空を切っていた。
僕にかわされたショックで、一瞬神原の動きが止まる。
神原の驚愕も無理はない。
その悪魔の手は、腕力どころかスピードさえも、
超一級だと言うことを、僕ですら知っていた。
だからこそ、だ。
常人には視認出来ないスピード――お前の隙はそこにある。

「見え見えなんだよ。人の股間ばかりギョロギョロと凝視しやがって……っ!
お前がうっかりを装って、僕の一物を握ろうとしてただなんてバレバレだ!」

相手の防御をつらぬき、視認すらさせない、悪魔の手。
そんな強すぎるカードも、狙いがバレてしまえばただのイージーパンチだ。
視認を嘲笑う神速の突きが、股間めがけて飛ぶ一瞬前に
避けてしまえばいいだけのこと。

神原が的を絞らずに『体のどこかに触れてくれ』何て適当さで
突いてきていたら、その時点で僕が負けていただろう。
力量差をくつがえせたのは、僕が凄いわけでも何でもない。
全てお前の油断が敗因さ、神原。

僕は、行く当ての無くなった神原の猿の手を、自分側に思い切り引き寄せた。
柔道の崩しの要領で、神原のバランスを奪う。

「――くっ!?」

体制を崩している最中の神原は無防備で、僕は自由に動ける。
だが、神原は防御の態勢を取らない。
非力な僕に、神原を一撃でねじ伏せる武器が無い事がバレているからだ。
一発貰っても、耐えてやり返せばいいと踏んだのだろう。

「甘いよ神原……大甘だ! 勝負はもうついている!」

僕は隙だらけの神原に背を向ける。

「っ! 窓から逃げる気か!?」

そんな選択肢はハナから捨てている。
飛び降りで死ぬほどヤワではないが、痛いものは痛い。
そもそも、窓を開けて乗り越えている間に捕まるだろう。

検討外れだよ神原。
そんなリスクを背負う必要なんて、どこにも無いんだ。
僕は目の前に棒立ちしていた八九寺を抱え込んだ。

「あ――ありゃりゃぎさんっ!? な、何をっ」

僕のセクハラを、いつも動物的な勘で何割か撃退してきた八九寺が、
何の抵抗も出来ずに抱きすくめられてしまった。
それはあまりに僕の行動が予想外だったから。
誰の頭でも予想出来なかった、常識の範疇からはみ出た策、それは――

「八九寺の身柄は拘束したっ!!」
「…………はい?」

疑問をあげる八九寺のスカート裾を、僕は少しだけ掴みあげ、

「神原、お前が少しでも動けば、八九寺のスカートを『めくらない』っ!」

神原は直立不動のまま固まった。
にやけた口元からは涎を垂らし、両手はガッツポーズのまま。
敵である僕の命令に従った、その時点で、勝敗は決した。

「八九寺のスカートという人質をめくられたく無かったら、
僕を好きに殴りに来い!」
「主人公が女の子を人質に取るとかありえませ―――んっ!?」
「参ったああああああああぁ! 私は参ったぞおおぉぉぉぉ!!」
「嫌あああああああああっ!?」

結果。
阿良々木暦○ ー 神原駿河×
八九寺のパンツ、白。

僕と神原の死闘は、僕の作戦勝ちで幕を閉じた。
が、パンツ話はあまりに近所迷惑なので終了。
この話が某雑誌連載の、TOらぶるばかりに巻き込まれる
某ラブコメ漫画だったら、後10週くらい続けてもよかったのだが。
あくまで健全な伝奇ですので。

「では次に行きましょう―-! 待ってましたっ、
戦場ヶ原先輩の恋バナー!」

口笛を吹いてアゲアゲに盛り上がってるのは神原一人だった。
八九寺はパンツ見られたショックで、また部屋の隅に戻り泣きべそかいていたし、
千石はさっきからなぜか不機嫌そうだ。
もうこの企画自体、間違いなんじゃないのか。
僕の為にやってくれてるのはわかるが……そんなに楽しくないぞこれ。
そんな空気を完全に無視して、戦場ヶ原が語り出す。

「恋愛の話といっても、私の恋愛経験をほとんどを占めるのは
阿良々木くんだし、これからだって阿良々木くんだから、
ぱっとしないわよ?」
「悪かったな、ぱっとしない男で」

しかし、何だ…。
すっごく恥ずかしいぞ、これ。
戦場ヶ原と二人きりで恋愛関係の話するだけでも、
まだ顔から火が噴きそうだってのに。
皆の前で発表とか……なんという羞恥プレイ。

「そうね……阿良々木くんは胸に興味が無いわけじゃないようだけど、
異常に食いつくのは、腰のくびれ辺りかしら」
「それのどこが恋バナだあぁ――っ!?」

「はいっ! はいっ、はいはい!! 戦場ヶ原先輩に質問があるっ!」

神原のテンションの上がり具合は異常だった。
お前、何でそんなに平気なんだよ。
ついこの間まで戦場ヶ原の事が、本気で好きだったくせに。
僕を殺したいくらいに。

「許可するわ。ただ、阿良々木くんとの性生活については答えられないけど。
お互い、処女と童貞だし」
「包み隠さず語ってるじゃないか!? 僕のプライバシーを返せ!」
「で? 質問というのは、何?」

神原はがっくりと肩を落として、

「シモ以外の質問は無いからいい……」
「お前本当にシモ命だな!」

「あの……っ! 私も、質問していいですか?」

意外なとこで、意外な人物……千石がおずおずと挙手する。
まだ若く純朴な少女だというのに、汚れた人達の話題に
一生懸命加わろうという努力が涙ぐましい。
お前、付き合う友達絶対間違えてるよ。
いや、全部僕のせいだけどさ。

「あの、その……せ、戦場ヶ原さんは、こよみお兄ちゃんのこと
……本当に好きなんですか?」

千石のしゃべり方は、まだ頼りない少女を連想させるが、
戦場ヶ原を射貫く強い視線は、戦う女のものだった。
誰もが予想だにしなかった質問。
誰もがすぐに反応出来なかった為、場の空気が一瞬凍る。
よりによって、戦場ヶ原に、よりによって何て質問を。
いや、質問というよりは宣戦布告だ。
あまりに重すぎる空気に、八九寺が帰っていいですかと泣きを入れてくる。
我慢してろ。僕なんか、帰る家がここなんだぞ。

「だって……戦場ヶ原さん、は……こよみお兄ちゃんに
ちっとも優しくないし、それどころか暴力振るったり、
全然恋人同士に見えないからっ」
「わかってないなぁ、撫子ちゃんは」

二人の間に、神原が間に割って入る。
もめ事になる前に、仲裁してくれるのだろうか。

「暴力を振るい振るわれるのが好きなカップルもいるんだよ」
「あらぬ誤解を植え付けるな!? よけいこじれるだろうがっ」
「サドマゾっていってね。撫子ちゃんはどっちかな? ちなみに
私は超がつくほどのドMだ。おしりをつねられると感じてしまう」
「聞いて無いから語り出すな!」

戦場ヶ原は、千石の挑戦的な糾弾に少しも動じず、いつもの調子で返す。

「おかしな事を聞くわね。私と阿良々木くんが付き合っている事、
知っているのでしょう? 私が、彼女いない歴=年齢の阿良々木くんに
土下座されて付き合った経緯も、ね」
「事実をねつ造するなっ! お前の方から告白してきたんだろっ」
「そっちの方が阿良々木くんらしいと思って」
「お前ほんっと僕を貶めるの好きだよな!? 本当に好きなのかよっ」
「打たれ強い所が好きよ。刻んでも死なない所とか」
「本当にそれが理由なのかよ!? 僕は絶対破れない
サンドバックか何かかっ!?」

相変わらず無茶苦茶言う奴だ。
僕の事を散々罵倒したり、時に警告無しの暴力を振るってきたりと、
ちっとも恋人っぽくない。

「こよみお兄ちゃんは、いいのっ!? ぶたれたり、
鋏でちょん切られちゃってもいいのっ!?」
「阿良々木先輩も望んでいることだ」
「おいっ! ちょん切られちゃうのはさすがに許容できないっ」

千石が疑うのも当たり前だ。
でも僕は、戦場ヶ原の奇抜な性格を、付き合う前から知っていた。
わかってて付き合った。
なら戦場ヶ原に非なんて無い。
あるとしたら、それは。

「まあ……血の気の多い戦場ヶ原も、嫌いじゃないけどさ…」

僕の方からもう少し歩み寄れば。
周りにわかるくらい、戦場ヶ原萌えな所を出していけば、
少なくとも千石が僕らの関係を妙な方向へ勘違いしたりしないだろう。

「だからさ千石、僕と戦場ヶ原はハタから見たら奇妙に
映るかもしれないけど、僕は」

千石の顔を見る。
めっちゃ引いていた。
うわぁ。ロリコンの汚名だけでも生きづらい世の中だってのに。

「……そ、そうなんだ……ちょ、ちょっと驚いちゃった、かな」

僕との距離の取り方は、ちょっとどころじゃ無かった。
さっきまで、割と僕の事を『ちょっと憧れる、年上のお兄ちゃん』
風に見てくれた千石。
今はもう目も合わせてくれない。
心の中で、僕のロリコンがしくしくとべそをかく。

「でも、わたし理解するっ。こよみお兄ちゃんの事……
もっともっと知りたいからっ」

雲行きが怪しくなってきた。
早く次の話題に移らないと、何か悪い事がおこる予感がする。
だが、時既に遅し。
ランランと瞳を輝かせる神原は僕の制止を振り切り、
千石の頭を優しく慰める。

「君も、もっと強くなろう。そして、いつか阿良々木先輩を素手で」
「やめろ神原っ! 何物騒な事千石に教え込もうとしてるんだよっ!!」
「どうやったら強くなれますか?」
「猿の手というのは知っているかい?」
「うおおおおおぉぉぉ~~い!? 何てもん勧めてやがるっ!?」
これで、この場全員に僕がとびっきりのM野郎だという、
あらぬ誤解をされてしまった。
ちっとも楽しく無い……僕的に全然楽しくないぞ、このトーク。
千石に不純なイロハを教えようと、神原だけならともかく
戦場ヶ原さえも加わっていた。
器具はやめてくれ、器具は。

ふと、ぽつりと座る八九寺が視界に入った。
さっきからひとり話に加わらず、義務のように菓子をぽりぽりとつまんでいる。
僕と目が合うと、少し困ったような顔をして、視線を逸らす。
まるで、私の事はいいから楽しんでください、と気を遣っているみたいに。

八九寺の隣に座る。
ついさっき僕の性癖(誤解だけど)を知った後でも、逃げるわけでもなく。
いつものような自然さで、当たり前のように二人肩を並べられた。

「変態達の変態な会話が嫌いなだけです」

神原が対阿良々木用に練られた金的蹴りを教えてあげよう、
と千石にレクチャーしている。
あいつは先輩への敬いが足りない。
いつかシメてやる必要があるらしい。

白熱した神原は、うっかり蹴り足を僕の家具にひっかけてしまう。
そのまま力任せに振り切り、家具の破片が部屋に飛び散る。
あいつはもう出禁だ。

散った破片を、八九寺は僕の肩に寄りかかるようにしてかわす。

「阿良々木さんは人気者ですね」
「そうか? 人気っていうよりは……いじりやすいんじゃないのか」

一度くっついた肩は、そのまま離れず、くっついたままになる。
さすが子供、八九寺の高い体温は、僕の左半身を急速な勢いで温めてくれる。

「こんなにもロリコンで、あんなにも豚野郎なのに、
皆は豚良々木さんを好きだという…信じられません」
「無理に引っかけなくてもいいから。っていうか、
友達いないお前が言っても負け惜しみにしか聞こえないな」

反論がない。
左半身から、八九寺の振動が伝わってくる。
うわ、やば。半べそだ。
殴って泣かすならともかく、言葉で泣かすのは大人げなかったか。

「落ち込むなって。お前、すっごく年上の男にモテそうじゃん」
「嬉しくないですっ! 明らかにやましい人達じゃないですかっ!?
今想像してぞわっと来ました!」
「僕がいるだろ」
「うぅ……ロリコン以外の友達が欲しいですっ」
「……そっか」

こいつに友達がいないだなんて、ごく当たり前の事なのだ。
今日の今日まで、僕にしか見えなかったんだから。
そんなの、どうしようもない。
八九寺がいくら可愛くて、こんなにも面白い奴だったとしても、
見えない幽霊というハンデはあまりにも大きすぎる。

ずびびっ、と八九寺が鼻を鳴らす。

「ず、ずびばぜん……見栄はりまじだっ。ロリコンの友達でもいいですっ!」
「ロリコンを許容したっ!? お前妥協しすぎだろ…」

八九寺は伸びた鼻水をティッシュで拭かず、
あろうことか僕の袖で拭きやがった!
しかし、ロリコンの怪異に憑かれている僕は動じない。
この服は洗濯せずに、大事にとっておこう。

「阿良々木さんが望むなら、私歯磨き一杯しますっ。歯、磨きをかけますっ!」
「噛まなくていいからっ。望んでないから!」

僕しか友達がいない。
そんな生やさしい枷じゃない。
どんなに頑張っても、どんなに望もうと、八九寺の友達はこれ以上増えない。
幽霊だから当たり前の事。
そんなの、八九寺が認めても、諦めてしまっても。
僕は許容出来ない。
あいつが町でひとり、寂しそうにとぼとぼ歩いている姿を。
公園で遊ぶ子供達を、テレビを見るように眺めていた姿を。
僕は見るのがつらかった。
だから、八九寺の姿が見えるようになったのを聞いて、僕は嬉しくなった。
救われた気がした。

そうか、と僕は気づく。
八九寺を何とかしてやりたかったのは、僕なんだ。
その僕が、なぜか怪異に憑かれてしまった。
その後、ほどなくして八九寺の姿が皆に見えるようになった。
これを一連の物として関連づけると、答えは浮き彫りになってくる。

「阿良々木さんはラッキーですよ。こう見えて私、生前は結構人気者でしたから」
「かもしれんが、それを自分で言うなよな」
「ご近所の皆さんに自慢してもいいですよ。小学生の可愛い女の子とちょくちょく

密会している仲だと」
「通報されるからやめとく。っていうかお前、人見知り激しい?」
「今、人気者の真宵ちゃんって言ったばかりじゃないですかっ」
「生前は、だろ。今のお前は駄目駄目だ」
「何で……阿良々木さんにそこまで言われなきゃ、ならないんですか」

八九寺がすねてしまう。
何でって、そりゃ……気になるからだろ。
それは僕の願望であって、八九寺が強制される筋合いなどない。

「…だよな。悪い」
「……阿良々木さんは、私に他の皆と仲良くして欲しいんですか?」

小学生に見抜かれてしまった。
誤魔化してもしょうがないので、素直に頷く。

「今なら、阿良々木さんだけの物ですよ」
「お前、ロリコンの前でうかつにそう言うこというな」
「言うと、どうなりますか」

その挑戦的な言動に、無い乳の二つでも揉んでやろうかと思った。
だが言葉とは裏腹に、八九寺の目は頼りない。

「阿良々木さんのセクハラくらいなら、耐えられます」
「言ったな」
「でも、誰の瞳にも私が映らないのは……耐えられません」

僕だけにしか見えない霊体。
それは、他の誰にも見えないということ。
いるのに、見えない。
無視されているのと、何が違うのだ。

「誰に話しかけても無視されるし、誰も私と目が合うこと何て無いんです。
私は、ここにいるのに」

部屋の向こう側では、皆の楽しそうな笑い声。
八九寺は目を閉じ、耳を塞ぐ。
見てしまえば、聞いてしまえば欲しくなる毒を拒絶するかのように。
人に無視されたという傷は、深い。
存在を否定されたと同じ事なのだから。
今現在、八九寺の姿が皆に見えるようになったからといって、
否定された過去がすぐに消えて無くなる程、傷は浅くないのだ。

「今のお前、らしくないぞ。もっと欲張っていいんだ」

八九寺の頭に手をのせる。
手のひらに収まる小さい頭。
撫でられると、意外と素直に身をゆだねてくる。
こんな可愛い動物、僕専用にしたら罰があたる。

「お前の事知ってるの、僕だけだと思ったか?」
「え?」
「お前、今でも結構人気者なんだぜ」
「な、何言ってるんですかっ。誰も私のことなんか」

油断大敵。
久々に頭を撫でられてか、ぼへーっとしていた八九寺の脇に両手を差し込み、
パイタッチ&マッサージ!
小学生に乳なんて無いとおっしゃる皆さん。
実際に触って試してほしい。
胸骨の上にうっすらと張る、ほんのわずかな脂肪。
意識しないと知覚出来ない、だが真のロリコンにはハッキリとわかる。
ふくらみかけの希望、それが……少女のおっぱい!

「嫌あああああああああああぁぁぁ~~~っ!?」
「暴れても無駄だ八九寺ぃ! 僕の両手は、心の木工用ボンドで
お前の貧乳に接着済みだ!」
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